私たちは何も理解していなかった。
先人たちが過ちに至った理由を。
自分たちが目指していた物の正体を。
絶望は悪意からは生まれない。
良かれと行われる行為の
積み重ねを温床に、それは育つ。
だが、私たちの試みを誰が否定できよう。
糾弾する者がいるなら教えてほしい。
明日の為、足掻くことすら諦めるなら
その生に何の意味があるのか。
――煌天破ノ都より見つかった
古い手記より
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核を打ち砕かれた巨人は膝をつく。
そして、
無数の蔓が体躯の至る所から生え、
君たちに向け伸び始める。
蔓は束ねられ、腕の形を取る。
その手の平にあるものは...
膝を抱え、丸まった巫女だった。
彼女はゆっくりと起き上がると、
君たちに向け手を振る。
「ありがとう。
みんなが来てくれるって、信じてたよ」
抱き合って喜ぶ君たち。だが、
その余韻に浸る間もなく
彼女は毅然とした顔で君たちに告げる。
「あのね、みんなに連れて行って欲しい
場所があるの。手伝って!」
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・・・
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「バルドゥール! バルドゥール!」
巫女の声が辺りに響き、
絶望が覆い尽くす闇から、
彼は目を覚ます。
「良かった、バルドゥール」
黒衣の皇子を抱きしめ、
喜びを全身で表現する巫女。
多くの顔が彼を覗きこんでいる。
帝国の兵だけではない。
タルシスの兵や冒険者、
彼が世界樹を使い命を奪おうとしていた
ウロビトやイクサビトまでいる。
皆、瓦礫に埋もれた皇子を助けるため
力を尽くした者たちだ。
巫女の世界樹への呼びかけで
皇子を蝕んでいた病は浄化されていた。
既に君たちと剣を交えた時の面影はない。
「もう怖いことしないでね...
何でも話して?
わたしも、みんなも、一緒にいるから。
どうしたらいいか考えようよ」
震える声で訴える巫女。
皇子は口を開くが、
その想いは声にならない
喉が潰れ、声が出せない彼は
腕を伸ばした。
彼女の頭を、そっと撫でる。
涙をためるその瞳で、少女は見た。
皇子の顔には、
穏やかな微笑みが浮かんでいた。
... ... ...
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